退職金の税金はいくら?退職所得控除と手取りの計算

税金・節税

長く勤めた会社からの退職金。税金の面ではかなり優遇されているものの、「結局いくら引かれるんだろう」と気になる方も多いはずです。

この記事では、退職金にかかる税金の仕組みを計算例つきで整理しました。読み終えるころには、自分の退職金の手取りの目安と、損しない受け取り方がわかります。

退職金にかかる税金の仕組み|退職所得は優遇されている

退職金には所得税と住民税がかかりますが、給与や賞与に比べて税負担が軽くなるように作られています。

●税金がかかるのは「半分だけ」

退職金の課税対象は、次の式で計算します。

課税退職所得 =(退職金 − 退職所得控除)× 1/2

まず勤続年数に応じた「退職所得控除」を差し引き、さらに残りを半分にしてから課税します。退職金が控除の範囲に収まれば、税金はかかりません。

●ほかの所得と分けて計算される

退職所得は、給与や年金とは合算せず、単独で税額を計算します(分離課税)。そのため、退職した年の収入が多くても、退職金の税率が跳ね上がることはありません。

●退職所得として扱われるのはどこまでか

会社から直接受け取る退職一時金だけでなく、中小企業退職金共済や確定給付企業年金からの一時金も、同じ退職所得として扱われます。控除の計算方法も基本的に同じです。

●一時金と年金形式で税金が変わる

退職金を一括で受け取ると退職所得控除、分割(年金形式)で受け取ると公的年金等控除の対象になります。

公的年金等控除は65歳未満か65歳以上かで金額が変わり、ほかの公的年金と合算して計算します。

どちらが有利かは人によりますが、退職所得控除を使える一時金が有利になるケースが多めです。会社で選べる場合は、両方の手取りを比べてみるとよいでしょう。

退職所得控除|勤続年数で決まる

退職金から差し引ける退職所得控除は、勤続年数で決まります。長く勤めるほど大きくなります。

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数に1年未満の端数があるときは、1日でも1年として数えます。たとえば30年1か月なら、31年として計算します。

なお、障害が原因で退職した場合は、退職所得控除に100万円が上乗せされます。

計算例|勤続38年・退職金2,000万円の場合

実際の数字で見てみましょう。

●控除に収まれば税金はゼロ

勤続38年なら、退職所得控除は800万円+70万円×(38−20)で計算します。結果は2,060万円です。

退職金2,000万円は控除2,060万円の範囲に収まるため、課税退職所得はゼロになります。所得税も住民税もかかりません。

長く勤めた人ほど、退職金に税金がかからないケースが多くなります。

●控除を超えても半分にしてから課税

たとえば勤続30年で退職金2,500万円なら、控除は1,500万円です。超えた1,000万円を半分にした500万円が課税対象になります。

残りを半分にしてから税率をかけるので、給与に比べて税負担はかなり軽くなります。

住民税も同じ退職所得に対してかかりますが、控除と1/2課税のあとに10%をかけるため、負担は軽めです。

●勤続15年なら控除額はどう変わるか

勤続20年以下は「40万円×勤続年数」で計算します。勤続15年なら退職所得控除は600万円です。

退職金が800万円なら、控除を超えた200万円を半分にした100万円が課税退職所得になります。

同じ800万円でも、勤続年数が長いほど控除も大きくなるため税負担は軽くなります。

申告書を出すと確定申告がいらない

退職金を受け取るときに、忘れずにやっておきたい手続きがあります。

●「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先へ

この申告書を勤務先に出しておくと、会社が退職所得控除と1/2課税を適用して正しい税額を計算してくれます。源泉徴収だけで完結するので、確定申告は原則いりません。

●出し忘れると一律20.42%引かれる

申告書を出さないと、控除が反映されず退職金に一律20.42%が源泉徴収されます。あとから確定申告すれば取り戻せますが、手間がかかります。

この還付申告の期限は、退職した年の翌年1月1日から5年以内です。出し忘れに気づいたら、期限内に確定申告をすれば払いすぎた分を取り戻せます。

退職時にもらう書類なので、早めに記入して提出しておくと安心です。

この申告書は退職時に会社から交付される用紙に必要事項を記入して提出する形式で、多くの会社では退職手続きの書類一式に含まれています。

提出先は勤務先で、税務署に自分で出す必要はありません。

●年の途中で退職したら還付の可能性

年の途中で退職してその年に再就職しなかった場合、給与から源泉徴収された所得税が納めすぎになっていることがあります。

この場合は確定申告をすると、払いすぎた分が戻ることがあります。退職金とは別に、給与の精算として覚えておくとよいでしょう。

会社から発行される「退職所得の源泉徴収票」は、翌年の確定申告や社会保険の手続きで提出を求められることがあるため、大切に保管しておきましょう。

2026年からiDeCoとの受け取り順に注意

iDeCoや企業型DCを一時金で受け取る人は、退職金との順番に注意が必要です。

●「5年ルール」が「10年ルール」に

退職金とiDeCoの一時金は、どちらも退職所得控除を使います。これまでは、iDeCoを先に受け取って5年あければ、それぞれに控除を満額使えました。

2026年1月からは、この間隔が10年に延長されました。10年以内に両方を一時金で受け取ると控除が調整され、税負担が増える場合があります。

この改正が適用されるのは2026年1月1日以降に退職金またはiDeCo一時金を受け取る場合です。

それより前にどちらかを受け取り済みなら、旧ルールのままで影響はありません。

●受け取る順番で必要な年数が変わる

iDeCoを先に受け取って退職金を後にする場合は10年、退職金を先にしてiDeCoを後にする場合は20年が目安です。

iDeCoがある人は、受け取る順番と時期で手取りが変わるので、早めに計画を立てておくとよいでしょう。

なお、iDeCoは年金形式での分割受取も選べます。この場合は退職所得控除ではなく公的年金等控除を使うため、一時金と組み合わせて控除を活かす方法もあります。

まとめ

この記事のまとめ

  • 退職金は「退職所得控除を引いて半分にしてから課税」される優遇された所得
  • 退職所得控除は勤続20年超で「800万円+70万円×超過年数」
  • 勤続が長いと、退職金が控除に収まり税金ゼロのケースも多い
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を出せば確定申告は原則不要
  • 出し忘れると一律20.42%が源泉徴収される
  • 2026年からiDeCoとの受け取り間隔ルールが5年→10年に延長

退職金の税金は、仕組みを知っておくだけで慌てずに受け取れます。まずは自分の勤続年数から、退職所得控除がいくらになるか計算してみてください。

iDeCoの仕組みはiDeCo完全ガイド、老後の収入の柱になる年金額は年金はいくらもらえる?もあわせてご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました